名探偵は勤勉でなければならない、という法はない。
たとえ救い難い怠け者であろうとも、恵美まどかはまごうことなき名探偵である。
恵美の保護者を自任し、ことあるごとに叱咤する踏分誠一と、
恵美を神聖視し、その従者であろうとする神柴健三が、スワロウテイルの記録者である。
スワロウテイルは、ネオンに満ちた多国籍街に事務所を構える。あらゆる個性を排除しないその雑多な街並みを、恵美は愛した。
そして、顔も名前も持たない「集団の悪意」を、恵美は憎む。
「大衆」という暴力こそが、スワロウテイルが切り裂く邪悪の正体である。
小さく美しいツバメは、多くの人に愛されるだろう。
たとえその羽のうちに、何を秘めていたとしても。